旅はまだ終わらない

NOMADICA

About

すべては、好きな人の一言から始まった。

高校生のころ、好きな人がSNSで見つけた
海外の写真を見せてくれた。

「ここに行きたい」

たったそれだけの一言だった。

その人をそこへ連れて行きたくて、
書店に通い詰めた。

そのとき、たまたま手に取った一冊がある。
TABBIPOの「僕らの世界一周」。

読み終えたとき、僕の中で何かが変わった。
その人を連れて行きたいという気持ちよりも、
自分が旅に出たくてたまらなくなっていた。

これが、すべての始まりだった。


10年間、旅には出ていた。でも、それだけだった。

バックパックを背負って、旅を続けた。

SNSも更新していた。
動画も作っていた。
やっている感覚だけはあった。

でも、本気でそこに取り組んでいたかと聞かれると、
正直に言えばそうじゃなかった。

続けていればいつか誰かが見つけてくれる。
写真が上手くなれば、何かが変わる。
どこか他人任せのまま、10年が過ぎた。


旅で、人生は変わらなかった。

これは僕の、今のところの正直な感想だ。

トルコに何度も通った。
7000時間を超える時間をあの国で過ごした。

チャイをもらったら「ありがとう」
店を出る時は「またね」

そんな小さな一言を重ねるうちに、
人との出会いは増えていった。

景色も、出会いも、確かにあった。
でも、帰ってきた僕の日常は変わらなかった。

旅は僕を劇的には変えなかった。


それでも、変わるまで続けると決めた。

変わっていないのに、変わるまで続けると言う。
矛盾しているのはわかっている。

でも、考えてみると、
少しずつ何かは動いていたのかもしれない。

写真集を作って、失敗した。
写真展をして、それも失敗した。
借金をしてトルコへ3ヶ月旅に出た。

全部うまくいったわけじゃない。
でも、その失敗で出会った人たちが今も残っている。
それが今、NOMADICAを動かす力になっている。

変わったのかどうか、まだわからない。
でも、続けることだけは決めた。


NOMADICAを作ることにした。

どこへ行くべきかとか、
何を見た方がいいとか、
そういうことは書かない。

代わりにあるのは、
旅の途中で立ち止まった瞬間や、
誰かと交わした何気ない会話、
理由のない寂しさや、温かいものに触れた瞬間。

移動そのものではなく、
移動の中で揺れた気持ちを残したい。

NOMADICAは、旅をしている人のための雑誌じゃない。
旅に出たかった人のために、物語を残す雑誌だと思っている。

今、その最初の一冊を作っている。
まだ途中だ。でも、確かに動いている。


これから。

沖縄で生まれ、トルコに魅せられ、
写真を撮り、旅の写真展を開き、
今は東京でNOMADICAを動かしている。

きっとこれからも人生を賭けてそんなことをしていくと思う。

旅はまだ終わらない。
僕たちは、いつも途中にいる。


山城 飛翔 / Yamashiro Kakeru
写真家・旅人。沖縄出身、東京在住。
トルコを旅した7000時間。旅の物語を編む人。

Instagram → @ky_arkadas
note → Kakeru Yamashiro