もう何年も話していなかった小学校の頃の友人からSNSでメッセージが届いた。
「久しぶりに会いたい」
相変わらず、淡白なメッセージだなと思いつつ、
もう何年振りの会話だろうかと思った。
小学生の頃、急に転校してきた彼とはあまり気が合いそうになかった。
それなのに、月日を重ねるたびに一緒にいる時間も増えていき、学生を卒業した後もこうやってきれない友人になっていた。
昔から彼と僕は正反対の性格のように見えていたけど、実際は深い部分で似た所があったのだと思う。
そんな彼から突然メッセージが届いたから少し驚いた。
なんで急に、とは思ったけれど、話しているうちになんとなくその理由がわかった。
旅人になろうと思った高校2年生の冬

ある本の表紙が僕の目に止まった。
僕の日常ではあまり見かけない、個性的なバッグを背負った1人の男性。
彼がどこかもわからない線路を歩んでいる写真。
兄弟が多かった僕は家族旅行で沖縄から出ることさえ自分にはできると思えなかった。
子供の頃、お母さんがテレビを見ながら家族で内地に行ってみたいねと言っていた言葉が今でも印象的に残っているくらいに。
だからなのか、潜在意識でそれに惹かれるようにその本を手に取り、レジへと向かっていた。
その中には少ない資金で世界を歩いた人々の物語が描かれていた。
一つ一つの物語を読むにつれて、僕にもできるのではないかと思う自分がいるのを感じた。
「バックパック1つを背負って世界を自分の力で歩く」
表紙の写真からは夢や好奇心、人としての力強さや旅に対する憧れが伝わってきた。
僕もこうなりたい。
いつの間にかそう思うようになっている自分がいた。
旅をすることで誰かの希望になりたいと思った

年月を重ねるごとに旅が好きになった。
安定した生活も、キャリアも早い段階で諦めた。
あの時、僕が本の表紙に希望を感じたように僕も旅をすることで誰かの希望になりたかった。
その方法は全くわからなかったし、今でもわからない。
でも、僕が旅を始めた頃から数人が僕の投稿を見てメッセージをくれていた。
「何をしている。どこに向かっている」
「旅で生きていくんだ」
その当時はそんな理想郷を目指すような発言ばかりして、旅をしていただけなのにその時から僕にメッセージをくれる友人たちはよくこう言った。
「お前ならできる。」
「最高に楽しそうな人生だ。」
「次はどこ行くの?何をするの?」
そう言ってくれていた1人が今回連絡をくれた彼だ。
当時の僕は自分の発言と現実が違い過ぎていてすごく苦しかったのを覚えている。
でも、メッセージが届くたびに頑張ろうと思えていた。
ある時、一緒に旅していた年上の旅人にこのことを相談したことがあった。
「僕は自分の生き方で、人に自分も頑張ろうと思ってもらえるような希望になりたい」
「でも、有名にもなれないし、実際の僕は自分の生活すらギリギリで苦しいことばかりなんだ」
僕より10歳くらい年上だった旅人は僕にこう言った。
「でも、そんな君が何かをする旅に君には直接メッセージを送ってくれる人がいるじゃないか」
「僕も含め、メッセージをわざわざ送ったり、アクションを起こすことってその人から何かを感じ取っていないとしないと思うよ」
僕はその言葉を聞いてそうかな?と半信半疑だったのだけど、今ならそれを理解することができている。
今思えば僕のなりたいものにはあの旅を始めた当初からなれていたのかもしれない。
大きな数を意識し過ぎて、一人一人のことを受け止めていなかったのかもしれない。
僕は今でも昔と同じものを目指している。
自分が好きなことを追い求めることでそれを見た人があいつにもできるのだから、自分にもできるかもしれないと思ってもらいたい。
彼からのメッセージを見た時、嬉しさがこみあげてきた。
あの時には受け止められなかったことを一つ一つ受け止めていこうと思った。
彼からはこんな言葉が届いていた。
「俺さもうすぐ独立するよ」
「これさ、お前の影響もあるんだよね」