僕は普段なら毎日3食食べるのですが、インドに来てからというもの日に日に食べる量が減ってきているのを実感する。
デリーに着いて間もない時はお腹が空くと辛くないものを探していろんなところを散策した。
オールドデリーだったり、観光地の近くだったり、グルガオンという比較的都会にも少し離れていますが行きました。
でも、どこにも、本当にどこにもインドでは辛くないものがない。普通にオーダーするとチーズと書かれているものを注文してもチーズがそもそも辛かったり、チャイニーズフードとあるから頼むとインド風中華。
もやは中華なのかもわからない。
寿司は流石に辛くはないだろうけど、寿司は試していない。
海外の日本食は高いから。
なので、日が経つにつれて僕の食欲はかなり減り1日1食しか食べなくなった。
朝起きると空腹になっているので起きてすぐスタバに向かいカフェモカを1番大きいサイズで注文する。
牛乳、チョコレートは空腹を紛らわすことができる。僕がインドで考え抜いた一つの解決方法だ。
そして、流石に夕食は食べないとやっていけないので宿の近くの屋台で日本でいうチャーハンを注文する。もちろん必ずノースパイシーと念入りにオーダーする。
最初の数日はそれでも出てくるチャーハンは赤くて辛いものでしたが、僕が毎日のようにノースパイシー、ノースパイシーと念入りにいうので1ヶ月経ったいまではだいぶ色が黄色くなってきた。味もそこそこ食べられるくらいまで辛味がなくなってきて僕も腹を壊すことがなくなった。
来たばかりの時は毎日のようにお腹を下してトイレにいましたから。それに比べればマシになったのかもしれない。
それで思ったんです。
どこでこんな辛いものを調達しているのかと。
ネットで検索するとスパイスマーケットというものがデリーの中心にあるらしく、一応有名な場所なのだという。
僕は興味に誘われてスパイスマーケットへと足を運んだ。
現地では確かにたくさんの店で数種類のスパイスを売っていて、そこらじゅうスパイスの香りが漂っていた。
でも、道路に面している店々では加工されたものが並べられており、そのスパイス売り場の横に建物の中へと通じる路地があった。
それへ入ると、ぱんぱんになった麻袋が僕の身長を超えるくらいに山積みになっており、その横ではメモ帳とペンを持ったおじさん達が何かを計算している。
その光景を眺めていると麻袋を若いにいちゃん達が肩や頭に乗せてどこかへと運んでいく。
次々と運んでいるのに麻袋が完全に無くなることはなく、しばらくそれを眺めていた。
なんだか、この空間にいると無性に咳が出ると思っていると僕だけではなく周りにいる人々もよく咳き込んでいる。
埃が待ってるのかと思ったが、今回に限ってはそうではないようだ。
咳き込むのは麻袋の近くにいるだけだった。
それもそのはず、麻袋に近づくと、その隙間から大量の赤い唐辛子が飛び出ている。
僕はすぐに理解した。唐辛子の匂いでみんなむせて咳き込んでいるんだ。
この建物は天井がなく、3階まであるが全て唐辛子を卸し売りする業者が店舗を構えていた。
ここはスパイスに慣れているインド人すらも咳き込ませるほど大量のスパイスの成分が充満しているようだ。
四方を囲まれたこの四角い空間に一体どれだけの唐辛子が保管されているのだろうか。
それを考えるだけで背筋が凍りそうだ。
これだけの唐辛子があれば麻袋1つ分で1人の人間を殺してしまうのではないかと思うほどに成分が漂っている。
そして、この光景を見てしまうとインドには辛いものしかないという偏見にも納得してしまいそうだ。
表のスパイス売り場に行っても細かくされた唐辛子が山のように積まれていて、それに群がる多くのインド人の姿が見られる。
袋に大量に入れられた赤い粉をいったい何日で消費してしまうのだろうか。
もはや僕にはインドの女性が家で大量の唐辛子を鍋に入れて沸々と料理する姿しか思い浮かばない。
まるで魔女の毒料理だ。