ニューデリー駅から列車に乗ること約5時間が経った。
列車内で仮眠を取るつもりだったのだが、途中止まった駅で家族が僕の席の後ろ横にきた。
子供たちはまだ幼く、列車の外を眺めながらキャッキャと騒いでいた。
子供たちを見ながらとても可愛らしいなぁと思っていたのだが、その子たちのおかげで僕は仮眠を取ることが全くできなかった。
僕はなかなか神経質なので、室内が騒がしかったり音楽が鳴っていたりするとなかなか寝ることが難しい場合が多い。
なので、ニューデリー駅からジャイプール駅に着くまで一睡もできず、朝6時に出発して、昼の12時ごろジャイプール駅に着いたときには、眠さと空腹で少しフラフラとしていた。
ほぼ徹夜に加えて、昨日の夜から何も食べていなかったので、早く宿に向かって遅めの朝食をとり、今日は1日寝て過ごそうと思っていた。
だが、駅につくと、インドでは当たり前のリキシャの勧誘、それを振り切っても出口を抜けると、またリキシャの勧誘、僕はこの時もうかなり限界に近かったので、勧誘されると頭が回らなくて余計に疲れてしまうと思い、歩いて宿まで行くことにした。
それでも道路を歩いていると後からクラクションを鳴らされ、乗るかとリキシャの運転手に言われる。
あの後からクラクションを鳴らす合図の仕方、今でもどうにかならないかと思うほどにびっくりする。
インドのクラクションの使い方は、日本のクラクションの使い方とは異なり、自分が見えない曲がり角を進む時など、見えない方から来る人に知らせるためにクラクションを鳴らす場合もあり、後から追い越す時にも使い、道行く人に乗るかどうか聞く時にも使う。
だから何が言いたいかと言うと、インドではクラクションの音がうるさすぎるのである。
道路に出ればクラクションが鳴らない時を思い出す方が難しいくらいに、常にクラクションの音は鳴り響く。
ほんとにどうにかしてほしい。
僕はインターネットがつながっていないので、オフラインでも使えるマップアプリをダウンロードしていた。
それであらかじめホテルの場所をチェックしていたので、その場所へ向けて約40分ぐらい歩いた。
ジャイプールの街はデリーほどではないが、いつもゴミゴミしている。
メイン道路を歩くと、常に自動車の排気ガスや砂が舞っているし、路肩には常にヘドロのようなものが積み上がっているし、しまいにはそこに追い打ちをかけるように、大きな牛たちが路肩を悠々と歩き、時に放尿、時に糞を叩きつけていた。
この牛たちの後を歩いているときに、急に様を出されてしまうと、靴もズボンも飛び散った、彼らの汚物で汚れてしまう。
そして僕の衣服を汚すのは彼らだけではない。
路肩に止めてある車を避けて、車のかげから前へ進むと。急に足元に男が口から水を出して攻撃してくる。
ムンムンとした暑さの中、自動車の騒音、汚い路肩を避け、細心の注意をしながら宿へ向かっている時になぜこんなにも多くのものが僕に接触してくるのだろうと考えてしまう。
口から水を出して攻撃してきた。彼もわざとではない。インド人はいつも水やチャイでうがいをしてその辺にペッと吐き出す。
たまたま運悪く、その先に僕が現れただけなのである。
それでも僕の靴はその彼の唾液混じりの水で汚れてしまった。
寝不足でイライラしてた時なので彼が申し訳なさそうにしている顔をひと目見て、その場を立ち去った。
いやひと目見てと言う感じではなく、睨みつけてその場を立ち去ったのかもしれない。
やっぱり寝不足と言うものは、1つもメリットがないものだと僕は実感した。
僕の予約していた宿は街の中心地ではなく、少し離れた地元の人たちが自動車を修理するエリアにあった。
こんなところに宿があるのかと思うほどに修理工場、細かい部品の会社またはカーナビなどの車のオプションを売っているようなショップの近くにあった。
その宿は予約サイトにあった。名前とは少し違っていたが、扉を開けて中で聞いてみるとここで間違いないようである。
予約していることを伝えると、宿のスタッフたちがバタバタとし始める。
いつもインドでは思うことなのだが、なぜインドのホテルは前もって予約を確認していないのだろう。
僕が来てから数十分ぐらい経ってから予約がされていたことを確認したようで、その後はアナログな感じで予約帳に名前、パスポートナンバー、電話番号、どこから来たかなどを書いて、最後にサインをして部屋の鍵を渡される。
部屋のドアに付いている南京錠を開けて部屋に入室し、真っ先にクーラーをつけ、ついていたファンを回した。
そしてシャワーを浴び、僕は食事をとることを忘れて、そのままベッドに倒れこんだ。
なぜインドでは宿までの移動だけの日であっても、こんなにも普通じゃないことが起こり続けるのだろうか。
いや、インドではと言うわけではなく、インドだからこそそうなのだと。
僕は結論づけて深い眠りに落ちた。
その後僕が起きたのは夜遅くなってからだったので、結局この日は食事を取らずにまた次の日まで我慢することになった。